身につける





地元に帰って花火を見た。
こないだ生まれた従妹がもう中学生になっていた。
私の時間の流れはいつからこんなに速さを増したんだろう。


首から下げる、光るペンダントはその日だけ特別に感じる物だ。
ペンダントを嬉しそうに私に見せる従妹。
いつもならさほど綺麗だと思わないのに、その夜はとても輝いて見えた。


ピカピカ光るおもちゃは、お祭りの日は欲しくて欲しくてたまらないのに、翌日になるとテーブルの上に転がっている。


私の日常もそれと似ていて、そのときじゃなきゃダメだというものばかり。


明日じゃダメ、今じゃなきゃ嫌、そんなことばかり。


それは翌日にはスイッチを入れてもらえないペンダントと同じだと思う。
特別な日だから、些細なことだって美しく感じるのだ。



些細なことと言えば

高校の卒業式に第二ボタンを投げつけられ、付き合うことになった昔の恋人から電話があった。



ちょっとした用事だったんだけど、気付けば思い出話になっていて
「あの第二ボタン、後輩とか他のクラスの子とかに欲しいって言われたんだけど、誰にもやらなかったんだからな」
と、わざと冗談ぽく笑いながら言われたんだけど、私は感動した。


あの第二ボタン、ずっと持ってたくて、携帯のストラップにした。
でも段々と紐が擦り切れて、どこかに無くしてしまったはず。


大事にしまっているよりも、ずっと良かった。